1. これは何の話?

エージェント開発者や業務自動化チーム向けに、LLM内で実行できる「プチ言語」を定義し、推論をステップごとに制御する手法を紹介する論文です。 Cognitive BASICは80年代のBASICに似た行番号付きコマンドを採用し、モデル自身が解釈・実行するため外部ランタイムを不要にします。 計画と実行を分離したトレースが得られるので、長手順の破綻点を特定しやすく、説明責任も取りやすいという狙いがあります。
2. 何がわかったか
行番号と簡潔な制御構文(IF、LET、GOTOなど)を使うことで、自然文プロンプトよりも曖昧性を排除し、推論の再現性が高まることが示されました。 各ステップがログとして残るため、途中で失敗しても該当行から再実行でき、長いタスクでの復旧時間を短縮できます。 また、明示的なステップ設計により、生成過程をモニタリングしながら安全制約を挟み込む設計が容易になっています。
3. 他とどう違うのか
従来のチェイン・オブ・ソートや自然文の思考の連鎖は、モデルが内部で暗黙に解釈するためステップ境界が不透明でした。 Cognitive BASICは人間が読める形で実行計画を残し、モデルが同じ構文で自己実行する点で、外部プログラムやツール呼び出し不要の軽量さが際立ちます。
4. なぜこれが重要か
企業のワークフローにLLMを組み込む際、信頼できるトレースとリカバリー手段が不可欠です。 シンプルな言語で手順を固定化すれば、運用側がレビュー・監査しやすく、エッジケースでの誤動作を抑えやすくなります。 また、モデル更新時にも同じスクリプトで挙動を比較できるため、回帰チェックのコスト削減につながります。
5. 未来の展開・戦略性
このアプローチを拡張して、外部API呼び出しやデータ構造操作を持つ「LLMネイティブDSL」を設計すれば、コード生成を介さずに業務ロジックを組める可能性があります。 モデル間で共通のDSLを共有すれば、推論パイプラインの移植性とテスト容易性も高まります。
6. どう考え、どう動くか
具体例として、社内手順書のチェックボットをCognitive BASIC風のステップに書き直し、各行で入力検証を行う形に置き換えると、誤回答の原因行を特定しやすくなります。
指針:
- 長手順の自動化は、まず行番号付きの簡潔なステップに分解し、各行で前提条件を明示する。
- モデル更新前後で同じスクリプトを実行し、ステップ別の成功率を比較して回帰を検出する。
- 失敗時に再開できるチェックポイント設計を組み込み、実運用のダウンタイムを短縮する。
次の一歩:
・今日やること:代表タスクを10行程度のBASIC風ステップに書き起こし、LLMで逐次実行させる。
・今週やること:ステップごとのログを保存し、失敗行からの再実行フローをスクリプト化する。
7. 限界と未確定
- BASIC風構文はシンプルだが表現力に限りがあり、複雑なデータ操作や並列処理には拡張が必要です。
- 実験は英語中心で、日本語や多言語で同様に曖昧性が減るかは追加検証が求められます。
- モデルが自己解釈するため、重大誤解釈時のフェイルセーフをどう入れるかは今後の課題です。
8. 用語ミニ解説
- 行番号付きで逐次実行する古典的な簡易言語。(BASIC風DSL)
- モデル内部でプロンプトを手続きコードとして解釈し、その場で走らせる仕組み。(インモデルインタプリタ)
9. 出典と日付
arXiv(公開日/最終確認日:2025-11-20/2025-12-06):https://arxiv.org/abs/2511.16837
