1. これは何の話?

企業向けAIエージェントの導入を検討するIT部門やビジネス部門の意思決定者向けに、即時導入可能なAIエージェント群の公開について解説します。

ソフトウェアエンジニアリング企業EPAMは2025年12月9日、Google Cloud Marketplaceで7種類のエンタープライズ向けAIエージェントを公開しました。これらはGoogle Cloudとの戦略的提携拡大の成果であり、Gemini Enterprise技術を基盤として構築されています。金融、医療、小売といった規制の厳しい産業向けに、本番環境で即座に利用可能なソリューションとして設計されています。

2. 何がわかったか

公開された7つのAIエージェントには、業界特化型のソリューションが含まれます。

金融サービス向けには「Agentic Know Your Customer(KYC)」があり、顧客確認プロセスを自動化します。医療・製薬向けには「Streamlined Document Authoring」で臨床試験文書の作成を効率化し、「AI for Drug Discovery」で創薬研究ワークフローを加速します。

汎用的なソリューションとしては「Agentic AI Query Optimization」があり、複雑なSQLクエリを自動分析・最適化・リファクタリングして実行時間とコストを削減します。小売向けには「Retail Media Orchestration Toolkit」で、クロスプラットフォームの広告・データ運用を支援します。

すべてのエージェントはGoogleが開発したAgent-to-Agent(A2A)プロトコルとAgent Developer Kit(ADK)を採用し、多様な企業環境でのスケーラビリティを確保しています。

3. 他とどう違うのか

AIエージェントのツールは多数存在しますが、今回の発表は「本番対応」という点が明確に異なります。

多くのAIエージェントはPoC(概念実証)段階に留まり、企業が本格導入するには追加の開発やセキュリティ対応が必要でした。EPAMのエージェントはGoogle Cloud Marketplaceを通じて提供されるため、調達プロセスが簡素化され、Google Cloudのセキュリティとコンプライアンス基盤の上で動作します。これにより、導入までの時間を大幅に短縮できます。

4. なぜこれが重要か

企業向けAIエージェント市場において、「すぐに使える」という価値が明確になった発表です。

AIエージェントは概念としては注目されていますが、実際に業務で使えるソリューションは限られていました。EPAMとGoogle Cloudの連携により、KYC自動化やSQLクエリ最適化といった具体的なユースケースが、追加開発なしで利用可能になります。これは「AIエージェント元年」から「AIエージェント実用化」への転換点を示しています。

5. 未来の展開・戦略性

Google Cloud Marketplaceを通じた第三者AIエージェントのエコシステム拡大が予想されます。

EPAMの成功例が示されれば、他のSIerやソフトウェアベンダーも同様のAIエージェントをMarketplaceで提供するようになるでしょう。企業はMarketplaceを「AIエージェントのアプリストア」のように活用し、必要なソリューションを選んで導入する形が一般化する可能性があります。A2AプロトコルとADKの普及も進み、異なるベンダーのエージェント間連携が容易になるかもしれません。

6. どう考え、どう動くか

たとえば、複雑なSQLクエリのパフォーマンス問題に悩むデータエンジニアリングチームであれば、Query Optimizationエージェントの評価を検討する価値があります。

指針:

  • 自社でAI化の効果が高い定型業務(KYC、文書作成、クエリ最適化など)をリストアップする。
  • Google Cloud Marketplace上の各エージェントの機能と価格を確認する。
  • 既存のGoogle Cloud契約条件でMarketplace製品が利用可能か確認する。

次の一歩:

  • 今日やること:Google Cloud Marketplaceで「EPAM」を検索し、7つのエージェントの概要を把握する。
  • 今週やること:自社の業務で最も効果が見込めるエージェント1つを選び、デモ環境での評価を依頼する。

7. 限界と未確定

  • 各エージェントの具体的な価格体系は公開情報では確認できず、Marketplace上での確認が必要。
  • 日本語対応状況は不明。金融・医療分野では日本語処理能力が重要なため、事前検証が必要。
  • A2AプロトコルとADKの技術詳細はGoogle公式ドキュメントで確認可能だが、運用実績は今後の事例蓄積を待つ必要がある。

8. 用語ミニ解説

  • AIエージェント同士が連携・通信するための標準規約。複数エージェントを組み合わせたワークフロー構築を可能にする。(Agent-to-Agent Protocol / A2A)

9. 出典と日付

EPAM プレスリリース(公開日:2025-12-09):https://www.epam.com/about/newsroom/press-releases/2025/epam-launches-seven-advanced-ai-agents-on-google-cloud-marketplace-delivering-high-impact-solutions-for-complex-industry-challenges