1. これは何の話?
OpenAIが2025年12月16日、AIの科学推論能力を測定する新たなベンチマーク「FrontierScience」を発表しました。物理学・化学・生物学の3分野にわたり、PhD専門家が作成した700問以上の難問で構成されています。
このベンチマークが必要とされた背景には、既存の科学系ベンチマークが「事実の暗記テスト」に偏りがちで、AIの真の推論能力を測れていないという課題がありました。FrontierScienceは仮説生成・検証・分野横断的統合といった高度な科学的思考を評価対象としています。
2. 何がわかったか
FrontierScienceは2つのトラックで構成されています。1つ目は「FrontierScience-Olympiad」で、100問の短答式問題による理論的推論能力の測定に特化しています。2つ目は「FrontierScience-Research」で、60のマルチステップ研究サブタスクを通じて現実の科学研究に近い課題解決能力を評価します。
初期テストでGPT-5.2はOlympiadトラックで77.1%の正答率を達成しました。これは専門レベルの推論において顕著な進歩を示しています。しかしResearchトラックでは25.3%に留まり、オープンエンドな研究課題への対応には大きなギャップがあることが明らかになりました。
3. 他とどう違うのか
従来の科学ベンチマーク(例:MMLUの科学セクション)は選択式問題が中心で、知識の有無を測る傾向がありました。対してFrontierScienceは「なぜそうなるのか」「次に何を調べるべきか」といった推論プロセスを重視します。
また、研究トラックの存在が特徴的です。これは論文を読んで次の実験を提案するような、実際の研究者が行う思考をエミュレートする設計になっています。
4. なぜこれが重要か
AIが科学研究のパートナーになりうるかを判断するうえで、適切な評価指標の存在は不可欠です。FrontierScienceは「AIが本当に科学的発見を加速できるか」という問いに対する客観的な進捗測定ツールとなります。
OpenAIが11月に発表した「GPT-5による科学加速実験」論文に続く動きであり、科学分野へのAI活用を本気で推進する姿勢の表れといえます。
5. 未来の展開・戦略性
今後、他のAI開発企業もFrontierScienceを採用してモデル比較を行う可能性があります。科学推論能力がモデル評価の標準指標として定着すれば、研究機関や製薬企業がAIを選定する際の判断材料になるでしょう。
また、Researchトラックのスコア向上がどの程度進むかは、AIが「道具」から「共同研究者」へ進化するタイムラインを占ううえで重要な指標となります。
6. どう考え、どう動くか
例えば、創薬研究チームがAIを仮説生成ツールとして導入する場合、Researchトラックのスコアがその実用性の目安になります。
指針:
- 自社・自チームが扱う科学分野でFrontierScienceの問題傾向を確認する。
- GPT-5.2のResearchスコア25%という限界を念頭に、AI提案の検証プロセスを設計する。
- 今後の各社モデルのFrontierScienceスコア推移を追跡する。
次の一歩:
- 今日やること:FrontierScienceの公開情報を読み、評価の仕組みを理解する。
- 今週やること:自分の研究・業務分野でAI推論を試し、限界を体感する。
7. 限界と未確定
- 700問の具体的な問題内容や難易度分布は詳細公開されていない。
- Research形式25%の低スコアが何を意味するか(ランダム回答との比較など)は不明。
- 他社モデル(Gemini、Claudeなど)のスコアは現時点で未公表。
8. 用語ミニ解説
- 与えられた事実から新たな結論や仮説を導く思考過程のこと。(推論 / reasoning)
9. 出典と日付
OpenAI(公開日:2025-12-16):https://openai.com/index/frontierscience/










