1. これは何の話?

猫型配膳ロボット「BellaBot」で世界中のレストランを席巻したPudu Roboticsが、新たな領域に足を踏み入れました。 東京で開催された国際ロボット展(iREX 2025)において、同社初となる四足歩行ロボットシリーズ「PUDU D5」を発表したのです。 これまでのPuduのロボットは「車輪」で移動するため、平らな床しか移動できませんでしたが、D5シリーズは「脚」を持つことで、段差やスロープ、屋外の不整地でも活動できるようになります。 単なる移動手段の拡張ではなく、Puduが目指す「あらゆる環境でのサービス自動化」に向けた重要なピースが埋まった形です。

2. 何がわかったか

PUDU D5シリーズの特徴は、産業用というよりは「サービス業」に特化した設計思想にあります。

  1. 親しみやすいデザイン: Puduの強みである、人間と共存しても威圧感を与えないフレンドリーな外観を継承しています。
  2. ハイブリッド運用: 既存の車輪型ロボットと同じシステムで管理でき、平地はBellaBot、階段や屋外はD5といった使い分けや連携(群制御)が可能です。
  3. 多用途性: 背中に様々なモジュール(配送ボックス、センサー、清掃ユニットなど)を搭載でき、ラストワンマイル配送から施設の巡回警備まで幅広く対応します。

3. 他とどう違うのか

四足歩行ロボットといえばBoston DynamicsのSpotやUnitreeが有名ですが、これらは主に点検や監視といった産業用途がメインでした。 Pudu Roboticsは、すでに世界60カ国以上でサービスロボットを展開している販売網と運用ノウハウを持っています。 「レストランやホテル、オフィスビルでどう使うか」という具体的なユースケースとセットで四足歩行ロボットを提案できる点が、他社にはない強みです。

4. なぜこれが重要か

サービス業界の人手不足は深刻ですが、これまでのロボットは「段差」という物理的な壁に阻まれていました。 PUDU D5の登場により、エレベーターの乗り降りや、建物の入り口にある数段の階段、公園の砂利道などをロボットが自力でクリアできるようになります。 これは、ロボットが活動できるエリア(商圏)が劇的に広がることを意味し、配送や清掃の完全自動化に一歩近づく技術的ブレイクスルーです。

5. 未来の展開・戦略性

Puduは、屋内(車輪)と屋外/不整地(四足)の両方のラインナップを揃えたことで、スマートシティ全体のインフラを担うプレイヤーになろうとしています。 今後は、D5シリーズが街中を歩き回り、商品を届けたり、ゴミを拾ったりする光景が日常になるかもしれません。 また、価格競争力のあるPuduが参入したことで、高価だった四足歩行ロボットの低価格化が進むことも期待されます。

6. どう考え、どう動くか

施設管理や物流の担当者は、ロボット導入の前提条件を見直す時期に来ています。

指針:

  • 「段差があるからロボットは無理」と諦めていたエリアを再評価し、四足歩行ロボットなら導入可能か検討する。
  • Puduの代理店に問い合わせ、D5シリーズの実機デモや、既存のBellaBotとの連携機能について情報を集める。
  • ロボットが「歩く」ことによる騒音や、顧客への心理的影響(怖がられないか)について、実証実験で確認する。

次の一歩: ・今日やること:Pudu Roboticsの公式サイトでD5シリーズのスペックシートを確認し、可搬重量やバッテリー駆動時間をチェックする。 ・今週やること:自社の施設内で「車輪では通れないが、ロボットに通ってほしいルート」を地図上にマッピングしてみる。

7. 限界と未確定

  • 歩行速度と安定性: 車輪型に比べると移動速度は遅く、転倒のリスクもゼロではありません。混雑した場所での安全性確保は課題です。
  • バッテリー効率: 脚の駆動は車輪よりもエネルギーを消費するため、稼働時間が短くなる傾向があります。

8. 用語ミニ解説

  • 四足歩行ロボット (Quadruped Robot): 4本の脚で移動するロボット。犬や馬のような構造を持ち、不整地走破性が高い。
  • 群制御: 複数のロボットがお互いに通信し合い、衝突を避けたり、協力してタスクをこなしたりする制御技術。

9. 出典と日付

[1] Pudu Robotics News (2025-12-03): https://www.pudurobotics.com/en/news/pudu-robotics-pudu-d5-series-irex-2025