1. これは何の話?

OpenAIが2025年12月にChatGPTの「モデルルーター」機能を無料およびGoティア(月額5ドル)のユーザー向けに撤回しました。ChatGPTの自動機能やUX改善の動向を追うプロダクト開発者や事業企画者向けに、この変更の背景と意味を整理します。

モデルルーターは、ユーザーの質問を分析し、簡単な質問には高速で低コストなモデル、複雑な質問には推論特化モデルを自動で振り分ける機能でした。今後、無料・Goユーザーは手動で推論モデルを選択できますが、デフォルトはGPT-5.2 Instantになります。

2. 何がわかったか

WIREDの取材によると、モデルルーターの導入後、日次アクティブユーザー(DAU)指標にマイナスの影響が出ていたとされています。推論モデルは複雑な質問に数分かかることもあり、多くの一般ユーザーは高精度の回答よりも応答速度を優先していました。

ルーター導入前は無料ユーザーの推論モデル利用率が1%未満だったのに対し、導入後は7%まで増加しました。OpenAIにとってはコスト増加要因でもあり、かつユーザーエンゲージメント低下という想定外の結果を招いたことになります。

3. 他とどう違うのか

AI推論プロバイダーOpenRouterのCOOクリス・クラーク氏は「汎用チャットボットでは応答速度とトーンが最重要」と指摘しています。Google検索がずっと速度を重視してきたように、消費者向けチャットボットでも同様の原則が当てはまります。

有料プラン(Plus:月額20ドル、Pro:月額200ドル)ではモデルルーターを継続提供しており、機能そのものを否定したわけではありません。ユーザーセグメントに応じた機能分化という判断です。

4. なぜこれが重要か

この変更は、AIプロダクトのUX設計における重要な教訓を示しています。推論モデルは技術的には最先端ですが、一般ユーザーの期待値(即時応答)と合致しないケースがあるということです。

背景にはGoogleとの競争激化があります。Similarwebのデータによると、Google Geminiは近月で大きく成長する一方、ChatGPTの成長は鈍化しています。平均滞在時間でも9月以降Geminiに逆転されたとの報告があり、OpenAIは「code red」を発令して社内リソースをChatGPT改善に集中させています。

5. 未来の展開・戦略性

OpenAI広報は、モデルルーターの技術基盤は今後も進化させ、改善後に無料・Goユーザー向けに再導入する可能性があると述べています。Anyscale共同創業者のロバート・ニシハラ氏も「問題ごとに適切なモデルと計算量を使い分けるルーティングは長期的に正しい方向」との見解を示しています。

同時にOpenAIは、GPT-5.2 Instantモデル自体の性能向上も進めており、推論モデルと同様に「じっくり考える」機能を追加することで、両者の性能差を縮める方針です。

6. どう考え、どう動くか

たとえば、自社アプリにAIチャット機能を組み込んでいる開発者は、「推論モデルに自動ルーティング」と「高速モデルでデフォルト応答」のどちらがユーザー満足度を高めるか、A/Bテストを検討する価値があります。

指針:

  • ユーザーの期待応答時間をセグメント別に把握する。
  • 「考え中」表示が20秒を超える場合のドロップ率を測定する。
  • 推論モデルは明示的なオプトインで提供することを検討する。

次の一歩:

  • 今日やること:自社チャットUIの平均応答時間を確認する。
  • 今週やること:ChatGPT Plus/ProユーザーとFreeユーザーの行動差を調査記事2件読む。

7. 限界と未確定

  • DAU低下の具体的な数値はOpenAIから公開されていません。WIREDの情報源に基づく報道です。
  • 「code red」発令の詳細な背景や他の施策との関連は公式発表されていません。
  • GPT-5.2 Instantの「じっくり考える」機能の詳細仕様は不明です。

8. 用語ミニ解説

  • ユーザーの質問を分析し、最適なAIモデルへ自動振り分けする仕組みです。(モデルルーター / model router)

9. 出典と日付

WIRED(公開日:2025-12-17):https://www.wired.com/story/openai-router-relaunch-gpt-5-sam-altman