これは何の話? — 事実

Googleは2025年11月6日、Gemini APIのリリースノートで「File Search API」の公開プレビュー開始を発表しました。開発者はドキュメントをアップロードすると自動でチャンク化・索引化され、Gemini 2.5 Pro/Flashが根拠付き回答を返す仕組みをAPIレベルで提供します。同時に旧プレビュー(gemini‑2.5‑pro‑previewなど)の非推奨スケジュールも案内され、開発者に移行を促しています。[1]

何がわかったか — 事実

File Searchでは、アップロード、ファイルの分割、ベクター索引化、検索、回答生成、根拠返却までを一連のAPIで扱えます。開発者はRAG(Retrieval Augmented Generation)用の自前パイプラインを構築する手間が減り、Google側でスケーリングやセキュリティを担保した状態で利用可能です。Gemini 2.5 Pro/Flashが対応モデルに指定され、即座にテキスト・コード・マルチモーダルのユースケースに適用できます。[2]

他とどう違うのか — 比較

他社のRAGサービスは自社でベクターストアやEmbeddingを組み立てる必要があるケースが多いなか、GoogleはGemini APIの一部としてフルマネージドのファイル検索を提供しました。根拠の引用やドキュメントID返却までAPI仕様に含めており、RAG実装の“はしご”をほぼすべてGoogleが握る形です。[2]

なぜこれが重要か — So What?

企業導入で最大のコストは「社内ドキュメントをモデルにどう安全に読ませるか」です。File Search APIが標準化されれば、ナレッジ管理やFAQボットの立ち上げ時間が短縮され、保守もGoogle側のアップデートに追随するだけで済みます。根拠提示がデフォルトになることで、監査・説明責任も果たしやすくなります。[1]

未来の展開・戦略性 — 展望

プレビューからGAに移行する過程で、価格・使用上限・SLAが整備されれば、企業はRAG基盤としてGemini APIを採用しやすくなります。Google WorkspaceやDriveなど既存資産との統合が進めば、社内文書を即座にFile Searchへ流し込むシナリオも増えるでしょう。RAGが“API利用”に収斂すれば、差別化はデータ品質や評価プロセス側に移ります。

どう考え、どう動くか — 見解

例:営業支援のQ&Aボットで提案書・FAQをFile Searchに登録し、根拠付き回答の最小機能を先に作る。

  • 導入前にRAGの評価指標(正答率・根拠一致率)を決め、検証用ドキュメントセットを整備する。
  • データ分類(公開・機密)に応じたアップロードポリシーを作り、アクセスログと合わせて監査対応を想定する。
  • 旧プレビューAPIを使っている場合は、非推奨期日までの移行計画を引き、互換テストを繰り返す。
    次の一歩:
    ・今日やること:File Search APIドキュメントに沿って10件の社内FAQをアップロードし、試験クエリを実行する。
    ・今週やること:Gemini・OpenAI・AnthropicのRAG機能を比較し、コストと制限を表にまとめる。

限界と未確定 — 事実

  • まだ公開プレビュー段階であり、性能・料金・使用上限はGA時に変更される可能性があります。[1]
  • データセキュリティやリージョン選択などの細かな設定は今後のアップデート待ちです。
  • 自社文書の品質や構造によっては期待通りの回答が得られない場合があります。

用語ミニ解説

“RAG(Retrieval Augmented Generation)”:外部知識を検索し、生成回答に反映させる仕組み。File SearchはRAGの主要処理をマネージド化する。
“根拠提示”:モデルの回答と同時に参照したドキュメントや引用箇所を返し、説明責任を果たす機能。

出典と日付

[1] Google AI for Developers Release Notes(公開日:2025-11-06/最終確認日:2025-11-07):https://ai.google.dev/gemini-api/docs/changelog
[2] Google AI for Developers File Search Docs(公開日:2025-11-06頃/最終確認日:2025-11-07):https://ai.google.dev/gemini-api/docs/file-search