1. これは何の話?
AI政策やロボティクス産業に関心を持つ経営者や政策担当者向けに、日本のAI戦略転換について解説します。
日本政府は2025年12月23日、初の「AI基本計画」を閣議決定しました。計画では、生成AIでアメリカ・中国に先行を許した現状を認め、「フィジカルAI」で「反転攻勢」を明記しています。フィジカルAIとは、ロボットやハードウェアと一体化して現実世界で動作するAIを指し、日本の製造業に蓄積された匠の技と産業データを活かす戦略です。

2. 何がわかったか
スタンフォード大学によるAI総合ランキングで、日本は研究・投資・人材を総合して9位に位置しています。ChatGPTやGeminiといった生成AIサービスでは米国勢が圧倒的なシェアを握り、日本発のサービスは存在感を示せていません。
政府は、デジタル空間で戦う生成AIではなく、実世界で価値を発揮するフィジカルAIで勝負する方針を打ち出しました。高市早苗首相は「AIは産業競争力と安全保障に直結し、国力を左右する。今こそ官民で反転攻勢に出る時だ」と述べています。

3. 他とどう違うのか
米国や中国のAI戦略がLLM(大規模言語モデル)やヒューマノイドロボットに重点を置くのに対し、日本は産業用途に特化した高精度制御技術を差別化ポイントとしています。
例えば、安川電機は「華やかさ」より「現場で本当に必要な地味な作業」を担えるロボットを開発しています。ペットボトルなどのゴミを認識して処理し、テーブルを拭くかどうかを自律判断できる機能を実演しました。

4. なぜこれが重要か
日本が強みを持つ製造業・産業ロボットの領域にAIを組み込むことで、既存の競争優位を強化する戦略です。これは「後発でも勝てる領域」を見極めた現実的な判断といえます。
チトセロボティクスは、カメラ画像によるロボットアーム制御ソフト「Crewbo(クルーボ)」を開発し、0.02mm(20マイクロメートル)という精度で針に糸を通す動作を実現しています。このような高精度制御は、日本企業に優位性があると同社CEOは述べています。

5. 未来の展開・戦略性
政府が示した「勝ち筋」としてのフィジカルAIは、NVIDIAが進める「GR00T」やTeslaのOptimusとは異なるアプローチです。汎用性より産業特化の精度を追求することで、ニッチ市場での覇権を狙う構えです。
今後は、製造現場のデータをAI学習に活用するための規制緩和や、スタートアップ支援策が具体化すると見込まれます。

6. どう考え、どう動くか
例えば、製造業でロボット導入を検討している企業は、汎用型ロボットだけでなく、日本発の高精度制御ソリューションも選択肢に入れるべきです。
指針:
- 安川電機やチトセロボティクスの製品情報をチェックする。
- 自社の製造ラインで高精度が求められる工程を洗い出す。
- 政府のAI基本計画の詳細文書を確認し、支援策を把握する。
次の一歩:
- 今日やること:AI基本計画の概要版をダウンロードして目を通す。
- 今週やること:社内のロボット導入ニーズを製造部門と整理する。
7. 限界と未確定
- AI基本計画の具体的な予算規模や実施スケジュールは、まだ詳細が公表されていません。
- フィジカルAIの国際競争力について、定量的な比較データは示されていません。
- 中国や米国のロボット企業との価格競争にどう対応するかは未定です。
8. 用語ミニ解説
- ロボットや機械とAIを一体化させ、現実世界で作業を行う技術です。(フィジカルAI / Physical AI)
- 高精度なロボット制御を可能にする画像解析ソフトのブランド名です。(Crewbo / クルーボ)
9. 出典と日付
TBS NEWS DIG(公開日:2025-12-29):https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2375790






