1. これは何の話?
AIエージェント(Claude Code等)を使った開発業務において、人間側の認知負荷が軽減されるどころか増大しているという現場の声を紹介します。2025年12月31日時点での開発者の率直な体験談であり、AIツール導入を検討する管理者や、すでに活用中のエンジニアが直面する課題を整理しています。
AIエージェント導入後の認知負荷:
┌──────────────────────────────────────┐
│ 人間 │
│ └→ backend-specialist 確認 │
│ └→ test-engineer 確認 │
│ └→ frontend-specialist 確認 │
│ └→ ...全部自分 │
│ ※中間管理職がいない構造 │
└──────────────────────────────────────┘

2. 何がわかったか
サブエージェントを増やすほど効率が上がるという期待に反し、確認作業が比例して増加するという構造問題が報告されています。人間の組織では部長→課長→メンバーと信頼を介した委譲が可能ですが、AIエージェントには「任せる」ができる中間管理職が存在しません。
さらに、人間同士であればキャッチボール的に小出しで確認できる作業が、AIでは「ドカンと書類の山を積まれる」形になります。spec.md(200行)、tasks.md(100行)、変更ファイル5個、テスト結果レポート…と一度に渡されるため、確認が「会話」ではなく「レビュー業務」と化しています。
3. 他とどう違うのか
従来のAIアシスタント(単発の質問応答)とは異なり、エージェント型AIは自律的にタスクを実行し成果物を生成します。この自律性がもたらす問題は、「点で考える」AIと「面で考える」人間の思考様式の違いにあります。
AIは「今この瞬間、この仕様で、このテストで動きました」という点の評価しかできません。一方、人間は「前提が崩れたらどうなるか」「ライブラリのメンテは続くか」「担当者がいなくなったら」といった面の評価を行います。この差が「完璧です」と自信満々に報告するAIへの不信感につながっています。

4. なぜこれが重要か
この認知負荷問題は「Oversight fatigue」「Cognitive overload」として研究者も問題視していますが、現時点で解決策がありません。AIにコードを書かせると「動いた、マージした、終わり」となり、苦労の記憶がないため1年後に初見状態に戻るという「記憶に残らん問題」も深刻です。
10年使う研究システムのような長期運用プロジェクトでは、コードの「所有感」がないまま運用を続けることの致命性が指摘されています。「なぜ動いているか分からない」「いつ壊れるか分からない」「壊れたら直せるか分からない」という三重の不安は、開発者の精神的負担を大きく増加させます。

5. 未来の展開・戦略性
現状の課題を踏まえ、著者はAIを「作業代行者」ではなく「メンター」として使うアプローチを提案しています。「作って」と指示するのではなく「ここどうしたらええ?」と相談し、選択肢を出してもらって自分で選び、自分で書く方式です。
AIの効果的な使い所として、自分でも書けるが時間がかかる処理の代筆(レビュー可能な範囲)、使い捨てスクリプト(理解不要)、叩き台(採用判断は自分)が挙げられています。共通点は「AIの出力をそのまま本番に入れない」という姿勢です。

6. どう考え、どう動くか
あるチームリーダーがAIエージェント導入後に疲弊しているとします。まずは「全承認が一人に集中している」状態を認識し、AIの出力をそのまま採用する範囲を限定することが第一歩です。
指針(3項):
- AIへの指示を「作って」から「選択肢を出して」に変え、自分で書く工程を残す。
- 長期運用が必要なコードは手動で書き、苦労の記憶を定着させる。
- 使い捨て用途とレビュー可能用途にAIの使用場面を限定する。
次の一歩:
- 今日やること:直近1週間でAIに書かせたコードを1つ選び、自分で説明できるか確認する。
- 今週やること:AI出力をそのまま採用した箇所と、自分で修正した箇所の比率を記録する。
7. 限界と未確定
- 著者個人の体験に基づく考察であり、組織規模やプロジェクト特性による差異は不明です。
- Claude Code以外のAIエージェント(GitHub Copilot Workspace等)での再現性は未検証です。
- 「メンターとして使う」アプローチの生産性への影響は定量化されていません。
8. 用語ミニ解説
継続的な注意・確認作業で生じる疲労です(Oversight fatigue / 監視疲労)。AIエージェント管理で特に問題になっています。
9. 出典と日付
Zenn ryo369(公開日:2025-12-31 / 最終確認日:2026-01-03):https://zenn.dev/ryo369/articles/d02561ddaacc62










