1. これは何の話?
ロボティクスや組み込みAIの最前線を追う開発者・事業企画者に向けた、Hyundai Motor Groupの戦略的発表です。同社のRobotics LABは、CES Foundry 2026においてAI半導体専門企業DEEPX社との3年間の提携成果として、オンデバイスAIチップの量産開始を発表しました。
このチップは「エッジブレイン」と呼ばれ、ロボットが外部接続なしに自律的に判断・行動できるようにする核心技術です。Physical AI(物理世界で動作するAI)の実装基盤として位置づけられています。
2. 何がわかったか
2023年のMOU締結から3年間の共同開発を経て、Robotics LABが制御ソフトウェアを設計し、DEEPXがチップを製造する体制が確立されました。
このチップは動作時の消費電力が5ワット以下と超低消費電力であり、クラウドやネットワーク接続なしにロボットが周囲を認識し、リアルタイムで自律的な判断・制御を行う「エッジAIブレイン」として機能します。
すでにRobotics LABの技術に統合されており、開発中の顔認識技術「Facey」や実証段階にある配送ロボット「DAL-e Delivery」に適用されています。今後はAIセキュリティソリューションや次世代モバイルロボットにも順次展開される予定です。
3. 他とどう違うのか
多くのロボットシステムがクラウド接続を前提としている中、このエッジAIチップはオフラインでの完全自律動作を実現します。これにより、ネットワーク遅延や接続障害の影響を受けず、産業現場や日常生活での信頼性が向上します。
また、Hyundai Motor Groupという自動車サプライチェーンのノウハウを持つ企業が、ロボットの安定した大量生産を目指している点も特徴的です。同社は2025年12月にiREXで自動車業界初の量産準備完了自律走行ロボットプラットフォーム「MobED」を発表しており、CES 2026ではロボティクス部門のBest of Innovation Awardを受賞しています。
4. なぜこれが重要か
エッジAIチップの量産開始は、Physical AIの実用化に向けた重要なマイルストーンです。クラウド依存を減らすことで、工場、物流倉庫、病院、空港など、安定したネットワーク接続が難しい環境でのロボット導入が現実的になります。
Hyundai Motor Groupは「空間のロボット化(Robotization of Space)」をビジョンに掲げ、高齢化対応、産業安全、労働力不足といった社会課題の解決にロボティクスを活用する方針を示しています。
5. 未来の展開・戦略性
Robotics LABは個別のロボット製品ではなく、ハードウェアとソフトウェアを統合した「Robotics Total Solution(RTS)」の提供を目指しています。今回のエッジAIチップはその基盤技術であり、今後の製品展開の核となります。
空港や病院でのパイロットプロジェクト拡大、国内バッテリー産業との連携強化、そして自動車バリューチェーンの経験を活かした安定した量産体制の確立が計画されています。
6. どう考え、どう動くか
産業用ロボットや自動化ソリューションを導入検討している組織は、Hyundai Motor Groupのロボット製品ラインナップと導入事例を確認する価値があります。
指針:
- エッジAI搭載ロボットが自社の環境(ネットワーク状況、電力供給など)に適合するか検討する。
- Hyundaiの空港・病院パイロットプロジェクトの進捗と成果を追跡する。
- 自動車サプライチェーンから派生したロボット量産技術が、品質・コスト面でどのような優位性を持つか評価する。
次の一歩:
- 今日やること:Hyundai Robotics LABの製品ラインナップ(MobED、DAL-e Delivery)を確認する。
- 今週やること:国内でのHyundaiロボティクス事業の動向ニュースを3件収集する。
7. 限界と未確定
- エッジAIチップの具体的な演算性能(TOPS)や対応モデルは公開されていない。
- 日本市場での製品展開スケジュールは不明。パートナー情報を待つ必要がある。
- 5ワット以下という消費電力の測定条件や持続時間は詳細不明。
8. 用語ミニ解説
- データが生成される現場で直接AI処理を行う技術。サーバーに送らず即座に判断できる。(エッジAI / Edge AI)
9. 出典と日付
Hyundai Motor Group Newsroom(公開日:2026-01-09):https://www.hyundai.com/worldwide/en/newsroom/detail/0000001103






