1. これは何の話?
Anthropicが2026年1月9日に公開した、AIエージェント評価の実践ガイドです。エージェントの能力を正しく測定し、開発・運用を改善するための体系的な手法を解説しています。
AIエージェント開発チームや、エージェントの品質保証を担う技術者に向けて、評価システムの設計から運用までを網羅した内容です。Claude Codeの開発経験など、Anthropic社内の知見も含まれています。

2. 何がわかったか
評価の基本構造として、タスク(テストケース)、トライアル(試行)、グレーダー(採点ロジック)、トランスクリプト(実行記録)、アウトカム(最終状態)という概念が定義されています。エージェントは複数ターンにわたってツールを呼び出し、状態を変更するため、単純な入出力テストでは不十分です。
グレーダーは3種類あります。コードベース(決定的テスト)、モデルベース(LLMによるルーブリック評価)、人間による評価です。実際の運用ではこれらを組み合わせて使います。
成功指標として、pass@k(k回中少なくとも1回成功する確率)とpass^k(k回すべて成功する確率)が紹介されています。前者は「1回でも成功すればよい」場面、後者は「信頼性が重要な顧客対応」場面で使い分けます。

3. 他とどう違うのか
従来のLLMベンチマークは単一ターンの入出力テストが主流でした。本ガイドはエージェント特有の複雑さ、すなわち複数ターン、ツール呼び出し、状態変更、非決定的な振る舞いを前提とした評価設計を提示しています。
また「数百タスクが必要」という思い込みを否定し、20〜50タスクから始めることを推奨する実践的な姿勢も特徴です。
4. なぜこれが重要か
エージェントは自律性と柔軟性ゆえに評価が難しく、多くのチームが「リリース後に問題を発見→修正→別の問題発生」という悪循環に陥っています。適切な評価システムがあれば、リリース前に問題を検出し、変更の影響を定量的に把握できます。
新モデル登場時の移行判断も、評価なしでは数週間かかる作業が、評価ありでは数日で完了できるとされています。

5. 未来の展開・戦略性
エージェントのタスクが長期化し、マルチエージェント協調や主観的な作業が増えるにつれ、評価手法もさらに進化する必要があります。Anthropicは今後も知見を共有すると表明しており、業界標準の形成に影響を与える可能性があります。

6. どう考え、どう動くか
例えば、社内でコーディングエージェントを開発している場合、まずユニットテストの合否とLLMによるコード品質評価を組み合わせた評価システムを構築します。失敗したタスクを蓄積してテストケースを増やすサイクルを回します。
指針:
- 現在手動で確認しているテストケースを20〜50件リストアップして自動化する。
- グレーダーは用途に応じて複数タイプを組み合わせる設計にする。
- 能力評価とリグレッション評価を分けて運用する。
次の一歩:
- 今日やること:既存のバグトラッカーから評価タスクに変換できる案件を5件選ぶ。
- 今週やること:SWE-benchまたはτ-Benchを参考に、自社エージェント向けの評価ハーネスを試作する。

7. 限界と未確定
- 本ガイドは主にClaude系エージェントでの経験に基づいており、他のLLMでの有効性は個別検証が必要です。
- 評価システムの構築・運用コストについての定量的なデータは示されていません。
- マルチエージェント協調や長期タスクへの適用は「今後の課題」とされています。
8. 用語ミニ解説
- 評価を通じて段階的に品質を上げることです。(ヒルクライム / hill-climb)以後は「段階的品質向上」と記載します。
- 特定の振る舞いが起こるべきか起こるべきでないかの両方をテストすることです。(クラスバランス / class-balance)以後は「両方向テスト」と記載します。
9. 出典と日付
Anthropic Engineering Blog(公開日:2026-01-09、最終確認日:2026-01-10):https://www.anthropic.com/engineering/demystifying-evals-for-ai-agents










